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生物界に見る弱者戦略1

2016年12月22日(木)

一里塚精二郎【文責】

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今回のテーマ:ずらす戦略

 私たちは、「経営戦略」や「マーケティング戦略」というようにビジネスにおいて「戦略」という言葉をよく使う。しかし「戦略」という言葉は、なにも人間社会だけのものではない。知的に進化した人間だけでなく、知力に劣る生物たちも様々な戦略を駆使して厳しい生物界を生き抜いている。

 生物界は、「弱肉強食」である。強い者だけが生き残り、弱い者は滅びゆく。それが厳しい掟である。それでは、弱い者は本当に滅びゆくしかないのだろうか?自然界では、様々な生き物が様々な生き方をしているが、強い者ばかりが生き残っているかというとそうではない。弱いように見える生物たちが厳しい自然界を生き抜いているには、それなりの理由がある。何気なく生きているように見える彼らだが、弱者には弱者なりの「生存戦略」がある。私たち人間社会は、グローバル化の進展や技術革新などで一層厳しい競争社会となってきているが、自然界をたくましく、したたかに生き抜く彼らの「弱者戦略」は、私たちにとって参考になる示唆を与えてくれている。

 我々ビジネスの世界におけるマーケットには、ナンバー1企業があり、次いでフォロワーやチャレンジャーなどと呼ばれる企業が複数存在している。しかし、生物界ではナンバー1しか生きられないとされている。それを表したガウゼの実験と呼ばれるものがある。高校生物の教科書にも掲載されているゾウリムシとヒメゾウリムシを一つの水槽で一緒に飼う実験である。水やエサが豊富にあるにもかかわらず最終的には一種だけが生き残りもう一種類は駆逐されて滅んでしまう。つまり、二種類のゾウリムシは生存をかけて激しく競い合い共存することができないのだ。こうした競争があらゆる生物の間で繰り広げられその結果ナンバー1しか生きられない。これが自然界における厳しい掟である。しかし、自然界を見渡せば、多種多様な生物が暮らしている。ナンバー1しか生きられないはずなのに、どのようにして多くの生物が共存しているのだろうか?

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http://www.city.minamisoma.lg.jp/etc/kankyo/mame.html(南相馬市自然環境情報サイトより)

 このガウゼの実験には続きがある。ゾウリムシとミドリゾウムシで同じ実験をしてみると二種類のゾウリムシは、一つの水槽で共存したのである。どうして、この実験では二種類のゾウリムシは共存しえたのだろうか。実は、ゾウリムシとミドリゾウリムシは、住む場所とエサが異なるのである。ゾウリムシは、水槽の上の方にいて、浮いている大腸菌をエサにしている。一方、ミドリゾウリムシは、水槽の底の方にいて、酵母菌をエサにしている。このように、同じ水槽の中でも、棲んでいる世界が異なれば、競い合う必要がなく共存することが可能なのである。これが生態学の分野で「棲み分け」と呼ばれるものである。つまり、同じような環境に暮らす生物同士は、激しく競争し、ナンバー1しか生き残ることができない。しかし、暮らす環境が異なれば、共存することができるのである。そのため、自然界に生存している生物は、他の生物と少しずつ生息環境をずらしながら、自分の居場所を作っている。

 この現象は、生物界だけでなく、私たち社会でもよく見られる。かつて地域に愛された地元密着の商店街が大手流通企業の大型店舗による大量で安い商品に対抗すべく、値下げ競争に挑み衰退していったことなどが同じ現象と言える。同じ商品で同じお客を奪い合えば必然と厳しい競争となる。この生物界における「ずらす戦略」を参考にするならば、大型店舗とは直接競争しない戦略をとることが賢明である。大型店舗で扱っている商品群とは違う品揃えをする。大型店舗がターゲットとしている顧客ではない客層を狙うなどが考えられる。私たちビジネスにおいても何をずらすかを考えることで新たなチャンスが見えてくるのではないだろうか。

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