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株式会社日立製作所 <br>ABMダッシュボードでデジタルマーケティングを加速
インタビュー記事

株式会社日立製作所 
ABMダッシュボードでデジタルマーケティングを加速

2020年7月27日

株式会社日立製作所
システム&サービスビジネス営業統括本部 
サービス営業推進本部 営業企画部 部長代理 佐藤 正樹 氏

ITやエネルギー、インダストリーなど、さまざまな分野において事業を展開している日立製作所は、今年創業110周年を迎えます。長い歴史と豊富な経験値に加え、2018年からはデジタルマーケティングを積極的に展開、営業部門と連携しターゲットアカウントへのアプローチ(以下ABM)を推進しています。さらにダッシュボードの導入により、ターゲット企業の絞込みや対象リードの行動チェックが速やかに行われるようになり、ABMがより効果的、効率的に進められています。今回はABMダッシュボードの活用にスポットをあて、デジタルマーケティングを指揮する営業企画部部長代理の佐藤正樹氏へ、オンラインにてお話を伺いました。

上司からマーケティングの費用対効果を迫られる

これまでのデジタルマーケティングの経緯を教えてください。

現在のデジタルマーケティング活動に携わる前の2013~14年頃、私は、広告宣伝、Web制作、社内外の展示会企画運営などのプロモーションを担当していました。当時はまだデータ分析への認識が甘く、展示会では何人集客したか、WebのPV数はどのくらいあるかといった確認で終わっていました。そうした中、当時の本部長から「結構な予算を投入しているが、何か役に立っているのか?現状のままなら価値がないよ。」と言われたのです。

これをきっかけに費用対効果を真剣に考えるようになりました。まずはリード情報を集めて営業へ渡すことを始めたのですが、営業側からは「自分たちはお客様を知っているから、そちらからの情報はいらないよ。」と返される状況でした。私は当時、製品事業部に所属していたので、営業が売りたいソリューションというより、自分たちが作って売って欲しい製品の情報を渡していました。メールの開封率やクリック率のパーセンテージではなく、誰がクリックしたのかが分かるデータを共有していたのですが、営業側からすると、「自分たちはその製品だけ売っているわけじゃない。」と思ったのでしょうね。なかなか振り向いてもらえませんでした。

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営業の方が振り向いてくれるデータが渡せるようになったのは何がきっかけだったのですか?

2018年にMarketoを導入し、営業施策に活用しはじめたのがきっかけです。こちらがデータを持っていると伝えるだけでなく、逆に「どのようなデータがほしいですか?」と聞くところから入っていきました。最初は知り合いの営業担当者がいる部門を5~6ヶ所廻りましたが、協力体制が築けたのは1部門のみでした。話を聞いてくれても、詳しい話をしてみると「それならいらない」と断られてしまったり、担当者は乗り気になっても上司で止まってしまったりと、なかなか上手くいきませんでした。

これまで営業は「必要であれば自分たちで新規開拓をする」という考えでした。しかも、マーケティング部門が担当していた展示会やWebサイトはブランディングが主目的で、日立グループがやっていることを世の中に告知する活動を行うという意識が強かったので、営業とはあまり接点がありませんでした。営業部門に声をかけてみないと何を求めているかわからないと思い、こちらから声をかけていきました。

展示会後の新規有望リード獲得までの期間が、2~3年から3ヶ月に大幅短縮

協力体制がとれた部門とは、具体的にどういった取り組みをされたのですか?

現在一緒に施策をやっている営業部門は、製造業や流通業のお客様を対象にした『産業・流通ビジネスユニット』の営業部隊です。以前からデジタルトランスフォーメーションの推進を指示されており、同じ課題意識を持っていたのです。

まずは、東京ビッグサイトで春に開催されている展示会「IoT/M2M展」に出展し、ブースで数千人の来場者の名刺を獲得しました。出展後、来場者へお礼メールを送付し、「出展していたソリューションの詳しい情報はこちらにありますよ」と、弊社のWebサイトに誘導していきました。Webサイトには、ダウンロードすることで閲覧できる事例記事を準備し、ダウンロード時にはフォームに名前の入力を必須とし、興味度を測ります。記事をダウンロードした人の中からさらに興味度の高い人を見極めるため、より詳しい資料をダウンロードできるページへ誘導しました。その両方をダウンロードした方はかなり興味度が高いと判断し、「担当が詳しい説明をします」と、さらに20人ほどの小規模なセミナーに誘導しました。その結果、初回で5~6件の有望リードを獲得でき、好スタートを切れました(図版1参照)。ほとんどが新規顧客でした。ソリューションは立ち上げたばかりの生産ラインの品質管理ソリューションで、まさにこれから売り出していきたいソリューションでした。

図版1:展示会後のフォロー施策

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展示会の開催は5月で、セミナーを開催したのは8月でしたから、2~3ヶ月で営業がアプローチする有望リードを獲得することができました。これまで営業が新規の有望リードを獲得するには2~3年かかっていましたが、非常に短期間で獲得できたため、営業サイドにはかなり喜ばれました。

これまでは、展示会でのアンケートで『話を聞きたい』と書いてあっても、実際に訪問してみると「ただ情報収集したかっただけです。」と言われることもあり、本当に興味があるのか事前に見極めようと、資料ダウンロードやセミナー誘導を行い、さらに、セミナー会場での参加者の受講している反応を見て、真剣に聞いている様子であれば本当に興味を持ってくれていると判断し、営業へ引き渡す流れにしました。

小規模なセミナーも、単純に展示会来場者から呼ぶと情報収集の人が多くなります。Webサイトでダウンロードしてもらい、さらに詳しい資料をダウンロードと、興味の度合いを測ったのがよかったですね。2018年~2019年で一連の流れを4回実施し、計20件の有望リードを獲得しています。新規案件の創出期間を短縮できたという点では効果があったと思います。

産業・流通ビジネスユニット以外の営業サイドとの取組みはあるのですか?

産業・流通ビジネスユニットとの取組みで社内表彰を受け、その後は、自治体や公共系を担当する社会ビジネスユニットからも一緒に取組みたいという声があがってきました。取り扱っているソリューションに興味のありそうな人へメールでWebサイトへ誘導し、訪問者へテレアポをとって営業がアタックすることを行いました。また、製品系の事業部では、働き方改革やセキュリティのソリューションについて展示会からWebサイトへ誘導し興味を醸成することに取り組んでいます。昨年、Marketoチャンピオンをいただいたり、メディアの記事にも取り組みが掲載されたりし、その情報を見て、外部のお客様から営業へ話があり、営業から声がかかるケースも増えました。最近は社内の広報活動も積極的に行っています。

Marketoではリードの行動履歴は把握できても、企業単位のデータはとれない

ここからはダッシュボードについてうかがいます。ダッシュボードを導入する前はどのような課題を抱えていたのですか?

ダッシュボードを入れる前は、Marketoでリード情報や個々の行動履歴を確認していました。例えば、ある業種で年商100億円以上の企業のリードを見たいという場合、Marketoでは個人単位は閲覧できるのですが、企業単位でまとめて見ることができません。どうしても確認したい場合は、企業に属している人をMarketoで抽出し、一人ずつアクティビティログ(行動履歴)をダウンロードして手作業で集計していました。営業サイドから「この会社」や「この業種」に絞ってほしいという要望が多いので、なんとか対応したいと思っていましたが、手作業では限度があります。エクセルをダウンロードして結合し、ピボットテーブルを作ってと、少なくとも丸一日かかっていました。

それだけ時間をかけてデータをまとめても、特徴が見えない場合もあります。昨年、営業から「幹部役員だけでいいから、この60社のアクティビティログを調べてほしい」という依頼があり、数日かけてアクティビティログを抽出し、渡したことがありました。しかし、そのデータを「使えそうですか?」と聞くと、「どう使えばいいのか・・・検討してみる」と言われてしまいました。データを"作るだけ"になってしまい、活用に至らないケースも少なからずありました。

また、営業から、渡したデータを見て「年商規模は?」「本社はどこ?」と、さらに聞かれるケースがありました。最初から年商規模や本社を入れてのデータ抽出を依頼してくれたらいいのですが、データを見たからこそさらに知りたくなる気持ちもわかります。ただこちらとしては「一度作った後、またもう一度調べるの?」という気持ちになります。

こうした悩みを持ちながら、企業単位でお客様情報をまとめて出したい、BIツールのMotionBoardを入れてはいるが何か使いようがないかと思っていたときに、御社のセミナーを受講しました。そこでダッシュボードのデモを見た時点で、「これ、そのまま欲しい」と思いました。まさにデモで見たテンプレートが欲しいものそのままだったのです。すぐにマーケティングダッシュボードパックを依頼して、1ヶ月くらいでダッシュボードを構築してもらいました。

『顧客カルテ』でターゲット企業を抽出し、リード情報を確認

実際にダッシュボードをどのように使っているのですか?

企業リストからターゲット企業を選出したり、営業サイドから要請される業種や年商、決算期といった条件で絞込みをしたりします。そこからリード一覧を確認してだれにアタックしようか考えたり、役職別にサイト訪問やメールの開封・クリック状況を見て、興味のある人を確認したりしています。(図版2参照)

図版2:顧客カルテ 企業別

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営業へは一緒に画面を見ながら説明しています。また、ある営業部門には自分たちでダッシュボードを見てもらっています。営業側の担当者が条件で絞込みをしながら使うケースが多いです。

実務に役立てているのですね。他にも使われている機能があれば教えてください。

営業がアカウントプランを作るときにも活用できそうという意見をいただいています。今までは、営業が顧客企業のWebサイトから情報を集めて作っていたのですが、FORCASが保有する企業データをMarketoに自動的に紐づくようにし、MotionBoardで可視化したことで、営業が企業情報を調べる手間が省けるようになります。(図版3-①参照)

また、アクティビティログ(行動履歴)も、営業が把握できる表記にしました。Marketoではアクティビティログ(行動履歴)がWebサイトのURLやメールのプログラム名で表記されるので、営業担当は何のページか分からない状態でした。ダッシュボード上ではアクティビティ名称にWebページのタイトルを表記させることで、どのページが閲覧されているのか、すぐに把握できるようになりました。(図版3-②参照)

図版3:顧客カルテ 詳細情報

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ABMダッシュボードは部署ごとの視点に合わせて設計する

製品事業部とは、情報発信をした後の反応の有無や、どの企業のだれが反応したのかを、ダッシュボードを見ながら話をしています。最近では、ニュースリリースや働き方改革の記事を出しており、「このテーマの記事がよく読まれているなら、このソリューションで攻めていこう。」と、施策を考えています。営業は"このお客様はどう動いているか"を見ますし、製品事業部は"自分の作った製品は誰に見られているのか"を見ます。ダッシュボードは、それぞれ見る側の視点に合わせた設計が必要だと考えています。

企業別リードのサイト訪問やメールの開封・クリック状況を見るコンタクトタイムラインは、「人数」と「件数」がタブで切替できるよう私自身で改造しました。営業は「人数」を気にしますし、製品事業部は「件数」を気にします。マーケティングサイドもWebの閲覧数やメールの開封率が高いのは何時か把握したいので、「件数」で見ています。(図版4参照)

図版4:顧客カルテ 詳細情報/コンタクトタイムラインの切替

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また、役職別のセグメントを作り、コンタクトラインを役職別に見えるようにしています。企業によって例えば『主任技師』や『シニアマネージャー』と名称が異なるため、営業から「課長以上で権限を持っている人に営業をかけたいので抽出してほしい。」と言われたとき、どれが該当するか悩むことになります。そこで統一して、『経営層・役員相当』『本部長相当』『部長相当』『課長相当』『係長・主任担当』『一般社員・その他』という名称を作り、Webフォームのプルダウンで役職を選んでもらい、振り分けできるようにしています。ただし、まだ役職が付与されていないリードデータがたくさん残っているので、データの精度を上げる活動を進めていかなければと考えています。

今後の課題は、データ整備と製品単位のデータ表示

ダッシュボードを使ってみての課題や要望はありますか?

使い始めて3ヶ月くらいが経ちますが、使えば使うほどデータ整備と拡充が重要であることが身に染みてきます。まだまだ整っていないデータがあり、アクティビティログにしてもIT関係のお客様データは集まっていますが、日立製作所全体としてはお客様データが足りない分野があります。足りていないデータを揃えていくことが、現在の大きな課題です。

また、営業からは企業別の情報が求められるのですが、製品事業部からは、自分たちが出展した際に、自分たちの製品がどれぐらい見られているのかという、製品単位でのデータが求められます。例えば『セキュリティ』と検索すると、セキュリティ関連のよく見られているページが表示できないかと考えています。

オンライン営業に向けてデジタルマーケティングの推進強化へ

新型コロナウイルスの影響はいかがですか?

最近では、オンラインでの営業も進みつつあるようですが、実際、弊社の営業部門からは「お客様と会話できない」と苦戦している話も聞こえてきます。緊急事態宣言が出されている期間中、営業部門も在宅勤務をしていたのですが、工場のラインを持っているお客様などとは、現場に行かなければ会話ができないケースもあります。お客様側にITの環境がないケースもありますので、弊社側でまだ準備が整っていない部分もあります。そもそも会社に出社しているお客様が少ないため、過去に名刺交換していたお客様の会社へ架電しても繋がりません。「どうやってお客様にコンタクトをとればいいのか?」と悩んでいる声も聞きます。

弊社では、新しいツールに抵抗がある人が多いようで、ダッシュボードを活用する人はまだまだ少ないです。ただし、こういう状況下では使わざるを得ません。営業スタイルも、これまでは直接訪問して、「最近どうですか?」と会話していたところをオンライン対応にしたり、訪問するとしても、要件だけ済ませて最低限の時間で切り上げたりと、接し方を切り替えながらもこれまでと同様の結果を残していかなければなりません。そこにはデジタルの力が必要だと思うのです。「お客様がWebでこういうページを見ていたから、こういうソリューションを持っていこう。」というように、デジタルマーケティングを活用してもらいたい。そのためにも、「デジタルの力でこんな情報が出せるよ。」と社内に伝えていきたいと考えています。

グループ会社との連携は今後、どのようにお考えでしょうか?

弊社はリード数や情報量が多いので、我々がやっているMarketoの環境に相乗りしたいというグループ会社が既に何社か出てきています。ただし、難しいのが、日立製作所と他グループ会社では、SalesforceなどのSFA/CRMの環境が異なるケースもあり、Marketoとの連携が一緒にできないなどの問題があります。とはいえ環境を共有できなくても、まずはやり方の共有から始めていきたいですね。そして十数年後には、日立グループで1つの環境のもと、デジタルマーケティングを推進していければと考えています。私はその土台を作るところに貢献できたらと思います。

プロフィール
株式会社日立製作所
システム&サービスビジネス営業統括本部 サービス営業推進本部 営業企画部
部長代理 佐藤正樹 氏
1990年入社。SE、設計・開発を経て、2006年~営業支援、2008年~はプロモーションを担当。2018年よりデジタルマーケティングを推進している。2018年にAdobe社のマーケティングオートメーションMarketoを導入し、翌年には同システムを活用した企業として「Marketo Champion 2019」を受賞。社内でもデジタルトランスフォーメーションの取組みが評価され、社内表彰を受ける。現在もデジタルマーケティングならびにダッシュボード活用の社内普及に尽力中。
【担当コンサルタントの声】
2019年11月末、佐藤様が弊社セミナーに参加され、セミナー終了と同時にお声がけくださったときのことは鮮明に記憶しています。その後すぐ訪問しました。そこでダッシュボードのテンプレートのデモをお見せしたところ、「これで良いです」と仰っていただき、12月初旬に提案書をお出ししました。ご契約には若干時間がかかりましたが、実際に日立製作所様の環境にテンプレートを当て込むまでの作業は10時間ほどで完了しました。要件定義を含めて1ヶ月以内で構築できました。こうして活用いただいているお話を聞くと、本当にうれしい限りです。マーケティングダッシュパックをご利用頂くことで「データドリブンマーケティング」を実現できると考えています。私共のサービスを通じて「データドリブンマーケティング」のあるべき姿を、もっともっと啓蒙し、推進していきたいと思います。

インタビュー実施日:2020年5月21日

事業開発顧問/マーケティングコンサルタント 中嶋 正生
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