BtoBにおけるデジタルマーケティングの予算獲得を進めやすくするポイント

2020年1月24日(金)

マーケティングコンサルタント 久道 真之介【文責】

デジタルマーケティングを推進するにあたり、組織体制や担当者のスキル、環境や方針などがすべて整っているケースは珍しく、多くの場合は社内リソース確保やツール整備、外部委託などにまとまった予算獲得が必要となる。

会社の風土として新しいものへのチャレンジ精神が旺盛な企業は、上層部の理解も得やすいだろう。イノベーターやアーリーアダプターが該当する。

一方で、まだデジタルマーケティグの推進ができていない企業でも、予算の承認権限を持つほとんどの経営層が『デジタルマーケティングの推進が企業として必要不可欠』と理解している。しかし現実のところ、デジタルマーケティングの予算が獲得できないケースが多い。

先日のセミナーでも、パネルディスカッションテーマの1つとして『デジタルマーケティグの推進に向けて上司をいかに説得するか』という議題があがった。やはりデジタルマーケティング推進において、予算獲得が最初の壁になることが多いようだ。

デジタルマーケティングの予算が獲得できない要因はいくつか考えられるが、中でも「予算を承認する経営層」と「予算申請者であるマーケティング部門」との間にある"ギャップ"に注目したい。このギャップを埋めることが予算獲得に直結するからこそ、デジタルマーケティング担当者は予算承認者の立場になって考えることが大切だ。

予算を獲得しやすいマーケティング予算策定の条件は3つ。
1.上位層の課題解決にも繋がっている
2.現在の施策課題が明確になった上での提案である
3.自社へ事業インパクトを与えられる

それぞれの条件について詳しく解説する。

1.上位層の課題解決にも繋がっている

ほとんどの企業では、『売上の拡大』が経営層の課題の1つとして挙げられる。そのためデジタルマーケティングを推進するにあたっては、売上の拡大に対してどう貢献できるのかを明確にしておく必要がある。

ただ、一言で"売上拡大"と言っても『新規顧客』からの売上もあれば『既存顧客』からの売上もある。さらに要素分解していくと、特定の製品カテゴリや業種、地域、商流などさまざまな切り口に分類されるだろう。おそらくこの粒度に対する販売戦略が、経営層の課題として中期経営計画に盛り込まれていることが多いはずだ。

そのためマーケティング部門の取り組みは、中期経営計画に盛り込まれている上位層の組織課題に対して、具体的にどの課題をどのように解決するのか、上位層が理解できる言葉で提示すると良いだろう。例えば「注力する製品カテゴリの売上に繋がる引合を○件獲得する」、「このエリアでいくらの売上に繋げる」というように、サイトのページビューや資料のダウンロード数ではなく、予算の承認権限を持っている上位層が関心を持つ組織課題の"売上へのコミット"が必要なのだ。

マーケティング部門の成果を売上に紐づけて『見える化』することは簡単ではないが、リードの動きを見える化し、販売プロセスごとのリード件数の推移を把握することで、売上への貢献度合いを明確化することは可能となる。大局的に見ると分かりづらいが、注力する製品カテゴリや地域などでセグメントを切り、対象領域を明確にすることで施策評価を分かりやすくすることはできる。

2.現在の施策課題が明確になった上での提案である

いくら上位層の課題解決案を提示しても、その実現性が乏しければ予算獲得の道は険しい。実現性を高めるためには、今あるリソース・環境での取り組み実績が求められる。現在のリソースおよび環境でできることをやり尽くした上で、『目標達成に向けたマーケティング課題』が明確になっていることが重要なのだ。目標に対しての課題が明確になっていれば、目標とのギャップを埋める手段として予算の妥当性が判断できる。

しかし、今あるリソースや環境を活用できていなかったがために予算を獲得できなかった話を多く耳にする。昨今相談を受ける機会が多いツール、「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」でもそうだ。「Marketing Automation」の導入でデジタルマーケティング推進スピードは確かに加速する。しかし無いからといってデジタルマーケティングが推進できないわけではない。

定義されたステージのリード管理やメールのアクティビティに応じたコミュニケーションの実現などは、手間はかかるもののメール配信ツールやExcelだけでも可能だ。その活動を推進していく中で、はじめてスキルの問題や機能の問題、作業負荷の問題などにたどり着く。

今あるリソースや環境を活用しきれていないうちは課題が明確になっておらず、予算獲得は難しい。もしその状態で予算を獲得できたとしても、結果的にほぼ失敗するだろう。まずは、今あるリソースや環境でできることをやってみることが重要だ。

3.自社へ事業インパクトを与えられる

会社全体での予算は決められており、当然予算は他部署との取り合いとなる。そして予算承認者は、予算分配の最適化を常に考えている。他の予算を差し置いてでも今期の予算をデジタルマーケティングへ充てるべき必然性があるかどうかは、その予算で課題を解決することで『どれほど事業にインパクトを与えられるか』が判断材料となるだろう。

予算の必然性に説得力を持たせるためには、先ほど同様、今まで実施した施策がポイントとなる。今あるリソースおよび環境で実現した数字と現在抱えている課題、そしてその課題を解消することによる数字の上積みが説明できるとかなり説得力が増す。つまり、今まで実施してきた施策の数字をベースとした上で、予算があれば実現できるであろう改善シミュレーションを提示できれば、予算の妥当性も伝わりやすいということだ。この時点でやるべきことをやり尽くしていれば課題も明確になっているため、高い精度でシミュレーションできるだろう。シミュレーションの数値を上位層が掲げている売上に繋げることができれば、より理解してもらいやすい。

今回はマーケティングにおける予算獲得のポイントについて取り上げた。BtoBの購買特性と同様、予算の承認は論理的な判断がされることが多い。自分だけの目線ではなく、予算承認者の視線になって提案することがポイントと言える。

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    マーケティングコンサルタント久道 真之介
    マルケト認定エキスパート(MCE)保有

    
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