すべてのビジネスパーソンの必読書『論点思考』をかんたん解説

2021年6月 7日(月)

マーケティング&セールス部 岩野航平【文責】

タイトル:論点思考 BCG流 問題設定の技術

著者:内田和成
出版社:東洋経済新聞社
第一刷発行:2010年2月11日



「仮説立てて仕事をしているのに、成果に表れない」こんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。今回紹介する『論点思考』では、仮説を立てる前段階にあたる、論点を定めるプロセスを体系的に解説しています。論点を定めるプロセスはコンサルタントの特殊技能として受け継がれていましたが、本書ではそのプロセスを誰でも活用できるように言語化されていて、とても参考になります。

弊社では、新卒採用でも中途採用でも、入社したタイミングで論点思考を読むことになっています。本を読んで学んだことをレポートにして社長に提出し、直接フィードバックを受ける伝統が10年以上続いています。

今回は、弊社が大切にしている『論点思考』の内容を5分で読めるよう、簡単に整理してみました。

著者紹介

著者:内田和成
経歴:早稲田大学ビジネススクール教授。東京大学工学部卒。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空株式会社を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。ハイテク、情報通信サービス、自動車業界を中心に、マーケティング戦略、新規事業戦略、中長期戦略、グローバル戦略などの策定・実行支援プロジェクトを数多く経験。2006年には「世界で最も有力なコンサルタントのトップ25人」(米コンサルティング・マガジン)に選出された。2006年より早稲田大学大学院商学研究科教授。ビジネススクールで競争戦略論やリーダーシップ論を教えるほか、エグゼクティブ・プログラムでの講義や企業のリーダーシップ・トレーニングも行なう。『仮説思考』(東洋経済新聞社)など著書多数。

※引用:『論点思考 BCG流 問題設定の技術』東洋経済新聞社(2010年)

論点思考とは

論点思考とは何かを解説する前に、論点とは何かを確認します。論点とは、解くべき問題のことです。そして論点思考とは、解くべき問題を定義する思考プロセスのことを指します。

仕事をしていると、様々な問題にぶつかることがあります。問題にぶつかったとき、その解決のために思考していきます。しかし、仕事をしていると問題が山ほど起こります。すべての問題に反応していては、時間を浪費してしまいかねません。数ある問題のなかには、貴重なリソースを割いてまで解決するほど重要ではないものもあります。

論点思考を身に付けると、様々な問題があるなかで、「どの問題を論点として設定すれば問題が解決するのか」を導くことができます。論点思考は、限られた時間を最大限有効活用するうえで大切な思考法なのです。

仮説思考と論点思考の関係

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※『論点思考』東洋経済新聞社(2010)を参考に、岩野で作成。

本書の著者である内田和成氏は、本書を出版する4年前に「仮説思考」という書籍を出版しています。論点思考と仮説思考は全く別の思考法ではなく、問題を解決するための一連のプロセスのなかにあるものです。問題を解決する方法を仮説立て、打ち立てた仮説に沿って行動し、仮説が正しければ問題は解消します。しかし、問題を解決する方法を仮説立てるには、問題そのものが定まっている必要があります。論点思考と仮説思考は、一連のプロセスでつながっています。論点思考で論点(解決すべき問題)を決定したうえで、仮説思考で問題解決につなげていくのです。仕事で成果を上げるためには、問題を解決する以前の「論点(解くべき問題)を確定する」プロセスの精度の高さが求められるのです。

論点思考の4つのプロセス

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※『論点思考』東洋経済新聞社(2010)を参考に、岩野で作成。

論点思考は、大きく4つのプロセスに分かれています。プロセスはそれぞれ以下の通りです。

  • プロセス①:論点候補を拾い出す
  • プロセス②:論点を絞り込む
  • プロセス③:論点を確定する
  • プロセス④:全体像で確認する

これらのプロセスのなかで、①~③では論点設定、④では論点整理をおこないます。ここでは、それぞれのプロセスについて詳しく解説していきます。

■ プロセス①:論点候補を洗い出す

論点思考では、はじめに論点候補を洗い出していきます。

何か問題に直面したとき、その問題を論点だと認識して飛びついてしまうことがあります。しかし、その問題は1つの事象であって、論点とは限りません。論点(本当に解決すべき課題)を定めるためには、どんなものが論点になりうるか、リストアップする必要があります。論点候補は無数に存在します。また、論点は人(立場)によって異なり、環境によって変化することがあります。さらに、仕事を進めている中で論点が進化することもあります。

「論点候補は複数あり、自分が問題視しているものは実は論点ではないかもしれない」という前提を持つことが論点思考の始まりといえるかもしれません。その視点を身に付けたうえで、考えうる論点を洗い出していきます。

■ プロセス②:論点候補を絞り込む

次のプロセスでは、論点候補を絞り込んでいきます。洗い出した論点候補は、当たり・筋の良し悪しを基準に絞り込みます。当たりを付けるには、経験と仮説が必要です。

釣り堀で魚がいそうな場所を探すとき、すべての場所を均等に試すことはありません。「大体この辺に集まっていそうだ」という、経験を通じた勘と、「この辺にプランクトンが集まるはずだから、この辺に魚がいるはずだ」という仮説をもとに当たりを付けていくのではないでしょうか。これと同じように、洗い出した論点候補も1つひとつ、経験と仮説をもとに当たりを付けていきます。

筋の良し悪しは、以下の3つのポイントで判断します。

  • 解決できるかどうか
  • 解決できるとしても、実行可能か(リソースの問題)
  • 解決することでどの程度のリターンがあるか

これらを吟味したうえで、コストパフォーマンスの高い論点候補だけに絞り込んでいきます。

■ プロセス③:論点を確定する

論点候補を絞り込んでも、まだ論点を確定するわけではありません。絞り込んだ論点候補をより詳細に分析していきます。論点候補のなかから真の論点を見つけるために、論点の仮説を立てます。仮説を立てるには、以下の3つのアプローチがあります。

  • ①質問して相手の話を聞く
  • ②仮説をぶつけて反応を見る
  • ③現場を見る

クライアントから相談を受けたり、上司から業務の指示を受けたりしたとき、上記3つのアプローチから「発言の真意・意図・バックグラウンド」を探ることができます。見つけ出した「相手の発言の意図」をもとに、すでに絞り込んである論点候補を構造化し、論点を確定します。

論点を構造化するうえで役立つのが、ロジックツリーです。絞り込んだ論点は別個のものとして存在しているのではなく、上下の関係でつながっています。ロジックツリーはすべて綺麗に作れればこの上ないですが、虫食い状になることもあります。しかし、虫食い状でも構わないので、論点をロジックツリーに整理することが大切です。ロジックツリーで全体像を確認したうえで、より上流工程にあり、より解決できる可能性があり、より解決することによって得られる効果が大きいものを論点として確定します。

■ プロセス④:全体像で確認する

虫食いのロジックツリーを作成して論点を確定したうえで、再度全体像を確認します。この工程は念のためにおこなうもので、論点を設定する工程はプロセス③までで終わっています。論点候補をツリー上に整理することに意識がいってしまい、全体のバランスが取れていないツリーを作ってしまうことがあります。ロジックツリーから論点を確定した後、鳥の目で全体を確認し直しておくと、ズレのない論点思考ができるようになります。

論点思考力のトレーニング方法

論点思考は、理論を理解すればすぐに身につくものではありません。長い年月をかけて場数を踏みながら、少しずつ身に付けていくものです。そのため、できるだけ早く、論点思考を鍛える方法を知り、日々鍛錬していく必要があります。ここでは、論点思考をどのように鍛えれば良いのかを解説します。

■ 問題意識を持って仕事に取り組む

論点思考を鍛えるために、常に問題意識を持って仕事に取り組むと良いとされています。論点思考は一朝一夕に身につくものではなく、長い年月をかけて身に付けていくものです。そのため、マネジメント層に昇格してから身に付けようとしては間に合いません。一般社員の頃から常に問題意識を持って仕事に取り組み、論点思考を鍛えていく必要があります。問題意識を持って仕事に取り組むことで、「上司が仕事を依頼した意図は何か」「お客様が相談してくださった意図は何か」「日々の仕事をより良くするためには何ができるか」など、論点を見つけるための種が生まれてきます。生まれた種をもとに、論点思考を繰り広げる場数を踏んでおくことで、少しずつ論点思考は身についていきます。

論点思考は、日々の小さな仕事のなかでも着実に身に付けることができます。面倒に思える目の前の仕事こそ、問題意識を持って論点思考を鍛える機会と捉えられます。

■ 視点を変える

論点思考を鍛えるには、視点を変えることが効果的です。視点を変えると同時に、視野を広げる・視座を上げる意識も求められます。視野を広げるとは、普段あまり目を向けていない方向に目を向けてみることです。自身が属する業界内では未曾有の問題と考えられるものでも、ほかの業界であれば何度も経験しているということはよくあります。視座を上げるとは、自分よりも2つ上のポジションに就いているつもりで仕事をすることです。自分の目線で見ると最適解に思えても、全体を広く見渡せば迷惑行為になってしまっている、ということは起こりえます。こうした問題には、視座を上げてみないと気付けないものです。視点を変えるとは、切り口を変えるということです。視点を変えるには、以下の10個の方法があります。

  • 逆から考える
  • 業界最下位だったらどうするか
  • 現場目線で考える
  • 両極端に振って考える
  • ロングレンジで考える
  • 自然界からの発想
  • 日常生活からの発想
  • アナロジーからの発想
  • 顧客視点で見る
  • 鳥の目・虫の目で考える

これらの切り口から問題を見てみることで、浮かび上がる論点が変わってきます。洗い出せる論点候補のバリエーションが増えることは、論点思考の鍛錬につながります。論点思考を鍛えるためにも、視点を変える癖を付けていってください。

■ 複数の論点を考える

論点思考を鍛えるには、複数の論点を考えることが重要です。複数の論点を考えることは、論点思考のプロセス①である「論点を洗い出す」工程に当たります。

少ない情報をもとに論点を確定してしまうと、真に解決すべき問題でないものを論点として取り上げてしまうことがあります。日々忙しいなかで論点を考えていると、目についた問題だけを見て論点として定めてしまいがちです。

論点思考のプロセスのなかで、論点を洗い出す工程は必要不可欠です。何か問題に直面したときは、論点候補を複数洗い出すことが求められます。

■ 引き出しを増やす

引き出しを多く持っておくと、論点候補を洗い出す工程で役立ちます。多かれ少なかれ、誰しも物事を考えるときに「頭のなかの引き出し」を参照します。バイアスと称して揶揄されるこもありますが、バイアスは必然的にかかるものです。頭のなかの引き出しが少ないと、洗い出せる論点候補も偏っていってしまいます。論点が偏っていると、真の論点にたどりつけないことがあります。

真の論点を見つけ出すには、できるだけ多くの引き出しがある方が望ましいです。しかし、引き出しは意図的に集めたり、覚えようとしたりしてもうまくいかないと著者は語っています。引き出しを増やすには、人の話に耳を傾けることが大切です。反論を受けると反発したくなることもありますが、相手が反対意見を持っているということは、自分の引き出しにはない考え方を得られるチャンスでもあります。人の話に耳を傾けることで、少しずつ引き出しを増やすことができます。

論点思考はビジネスパーソンの必読書

論点思考はコンサルタントだけでなく、すべてのビジネスパーソンの必読書でした。私は事業会社に勤めていたこともありますが、当時の仕事でも十分活かせたであろう内容が書かれていました。「課題を解決するために手間暇かけて仕事をしたのに、思ったような成果が出ない」「上司にいわれた通りに仕事をしたのに、違うと返された」こんな問題は、論点がズレているからこそ起こるものです。論点思考は身に付けるのには、長い時間を要します。私も1つひとつの仕事に問題意識を持って取り組み、論点思考をトレーニングしていきたいと思います。

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    マーケティング&セールス部岩野航平
    Google アナリティクス個人認定資格(GAIQ)保有

    
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