インタビュー

株式会社マルケト スコアリングとインサイドセールスで日本市場躍進中! マルケト日本法人のMarketo活用の秘訣

株式会社マルケト バイスプレジデント
小関 貴志 氏

(※注1:以下、社名についてはカタカナ表記で「マルケト」、ツールについては英語表記で「Marketo」と記載します。)

マルケトは2007年、マーケティングオートメーション(MA)の会社として米国で創業。全世界39ヶ国で約4100社(2015年9月現在)の企業がMAツール「Marketo」を導入しています。日本法人は2014年3月に営業を開始、10月にWebサイトを開設、すでに140社強の日本企業が導入しています。当初目標を大きく上回るペースで日本市場の開拓が進んでいる背景には、マルケトにおける「Marketo」の活用にも秘訣がありそうです。
今回は、日本法人マルケトの戦略・ビジネス開発を指揮するバイスプレジデントの小関貴志氏に、マルケト日本法人自体が、どのように「Marketo」を使用しマーケティング展開を行っているかについて、話をお聞きしました。

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お客様の規模・業種は選ばない。BtoB、BtoCいずれもターゲット

日本法人のマーケティング・営業方針について教えてください。

「Marketo」はお客様の規模や業種を選ばず、幅広い企業に活用していただけるツールです。大企業、中堅企業はもちろん、中小企業も20~30人規模ぐらいまではターゲットと捉えています。大手企業については営業主導で1本釣り、中堅中小はマーケティングでどうインバウンドするかを考えています。業種についても、MarketoはBtoBに定評がありますが、それだけでなく、BtoBにマーケティングスタイルが近い、保険、不動産はすでに国内で複数の導入実績があります。今後は、EC、化粧品、食品等のBtoC市場へも積極的に攻めていきます。

米国の営業組織は、エンタープライズ、SMB(中小企業)、BtoCの顧客分類別に3つの部門に分かれており、さらに横串でパートナー担当がいます。日本の場合は立ち上げたところなので、営業担当とアライアンス担当の2チームで活動しています。

スコアリングもシナリオの一環

貴社ではどのようなマーケティングシナリオを設計されているのですか?

まず商談に至るまでの弊社のマーケティングの各ステージを説明します。まず関心の有無に関わらず保有しているリスト情報が「Known」、これにメールを送りクリックする等何らかアクションがあると「Engaged」のステージに進みます。「Engaged」から競合や学生などを除き、弊社の販売ターゲットに合致しているコンタクトが「Target」で、ナーチャリングの対象となります。「Target」のうち、見込み度が高い、具体的にはスコアリングが一定の点数を超えると「MQL(Marketing Qualified Lead)」となります。マルケトではスコアが100以上を基準としており、MQLを"リード"と呼んでいます。ここまでがマーケティング担当部門の役割です。

MQLからは、インサイドセールス担当の出番になります。インサイドセールスが電話やメールでアプローチし、面談やWebミーティングの機会をねらいます。面談やWebミーティングの機会がとれれば「SQL(Sales Qualified Lead)」となり、ここからは営業が担当し、商談の見極めを行います。営業が面談した際に、まだ情報収集段階で商談の見込みがないと判断した場合は、「Recycle」に戻し、あたため直すという流れになります。

図1:Marketoのレベニューサイクルモデルと部門の役割

シナリオ設計の考え方は2つあります。1つはメールナーチャリング、もう一つはスコアリングでお客様のタイミングを測るものです。メールナーチャリングについては、まず「Engaged」が獲得できなければ、インサイドセールスが動けませんので、リストを獲得した後、約170ページある『マーケティングオートメーション完全ガイド』を読みやすいボリュームに9回に分けて、1週間に1回メールで送ります。その間のクリック状況で、マーケティング・オートメーションに関心ある層を見つけ、いかにお客様のサインを見逃さないかに取り組んでいます。メールナーチャリングはその1本だけで、複雑なプロセスの「カスタマージャーニー」にあわせたメールを準備しておく発想ではありません。

スコアリングはどのように設定されていますか?

スコアリングは、「属性」「行動」「購買意思」の3つの組合せで設定しています。米国本社では数百以上のスコアのシナリオがあり、多いもので1シナリオ100項目以上のスコアが設定されています。日本法人では米国法人のスコアシナリオから、日本の状況に適したものを選定し、現在、USの1/4程度の項目のスコアを設定しています。

スコアはかなり細かく設定します。例えば、デモの前後どういう行動をしているか、同じ資料ダウンロードした場合も30ページ見てダウンロードしたか、1ページ見てダウンロードしたかでは、時間にどれだけ投資しているかで購買意思が異なるとみなし、スコアにも違いをつけています。また、マイナスのスコアも設定しています。例えば、最後の接点から空いた日数をマイナス対象とし、スコアが高い人ほどマイナス幅を大きくしています。15日空いたら-5点、さらに50~90日空いたら-45点といった具合です。

スコアの点をつけるコツは、メリハリをつけることです。何か根拠のある計算から1点の差を問うといった精緻さを追求するものではなく、1つの"目安"と捉え、自分たちの仮説をもとにメリハリあるスコアを設定し、それが実際にどうだったかをチェックし、見直すことが大事です。

また、弊社では、スコアとは別に、「Act Now」というトリガーをたくさん設定しており、例えば「デモをみたら」すぐに営業へメールが飛び、アクションを起こすルールを作っています。また、一度コンタクトを失って2~3ヶ月ぶりに戻ってきたサイト訪問者については、逆にこれは温度感が高いと見て重視し、スコアは低くてもインサイドセールスに回すルールにしています。

インサイドセールスは売上向上・最大化のキーパーソン

マーケティングオートメーションを進める上で、インサイドセールスの役割が重要と言われますが、御社では具体的にどのような業務を行ってるのでしょうか?

スコア100以上のリード(MQL)はインサイドセールスに託されます。弊社ではインサイドセールスを「SDR=Sales Development Representative」(営業開拓担当) と呼びます。インサイドセールスとは、見込み客のタイミングを測りながら、関心領域を察知し、具体的に検討したいというところまで温めていく役割です。電話やメールでコミュニケーションするなかで、見込み客の実現したいことや課題を聞き出し、更なる情報提供や相談にのります。

インサイドセールスを担当する上で最も重要なのは、お客様にコールする前のリサーチです。1件あたりのリサーチに1時間程度かけます。Marketoに蓄積されたこれまでの行動履歴はもちろん、相手の企業の情報などを検索し、情報収集します。事前にリサーチを十分に行った上で、1コールにつき長い時で20分ぐらい、短くても10数分は時間をかけて電話でコミュニケーションを行います。電話がつながらないときは、4回までトライを行います。1回電話してつながらなければメール送付するという対応を4回まで繰り返して、それでも連絡が取れなければ「Recycle」に戻す流れにしています。

インサイドセールスは何によって評価されますか?

インサイドセールスの目標は「商談作成件数」と「商談金額」です。また、中間指標として「営業の商談をどれだけセットできたか」になります。

さらにインサイドセールスには重要な役割が2つあります。1つは、売上を最大化するために、全社の状況を見ながらフレキシブルな判断が求められます。ひたすらアポイントをとるのではなく、営業部門に投入する案件の数を時にはコントロールし、インサイドセールスで温めるというさじ加減をはかっています。中長期的に商談件数を最大化することと、短期的にアポイント数を最大化することはイコールではありません。インサイドセールスは全体を常に見て行動する必要があり、インサイドセールスによって全体の売上数字が大きく左右されます。インサイドセールスは売上向上・最大化のキーパーソンなのです。

2つ目は、見込客の生の声に触れ、社内にフィードバックすることです。市場調査やWebサイトのデータに加え、インサイドセールスが日々、見込客とコミュニケーションをする中から見えてくる情報は多く、貴重なものです。お客様が疑問に感じるポイントはどこなのか、自社のどこに価値を感じていて、競合他社のどこに魅力を感じているか、最近こんな問い合わせが増えた等々、社内にフィードバックされる内容はインサイドセールスの個人的な感想も含まれるでしょうが、その感覚的なものも含めて経営にとっては貴重な生の情報になります。

インサイドセールスはマーケティングと営業を繋ぐ接着剤であり、潤滑剤であり、加えてマーケティングオートメーションに更なる力を与え、効果を最大化する存在と言えます。

PDCAで重要なのは後工程の納得感

スコアの検証やPDCAはどのように回されているのですか?

スコアの検証は、米国本社では2週間に1回定期的に行っていますが、日本法人では現段階は少人数体制なので、商談後の感触について具体的な会話を中心に回しています。重要なのはどれだけ営業、インサイドセールスが本気になるかの後工程の納得感です。

営業はインサイドセールスが回してくるリードが本当にホットなのかを評価します。見込み度がゆるいリードであっても、それが営業側にわかった上で、マルケトとして狙いたい企業のリードであったり、また、案件が少ない状況であれば納得するでしょう。しかし、インサイドセールスがホットであると見て回しているリードがゆるければ、見直しが必要になります。また、インサイドセールスにしても、マーケティング担当から上がってくるMQLが見込みのないものが多ければ電話をしなくなります。スコアの基準は合っているのか、おかしいと思ったら見直す必要があります。

施策のPDCAは、毎週月曜9:00から実施するマーケティング担当とインサイドセールスのミーティングを中心に回しています。インサイドセールスはセールスフォースのダッシュボードを、マーケティング担当はMarketoとセールスフォースのダッシュボードを見て、リード件数や商談件数、リードの手つかずになっているもの等をチェック、改善策を検討しています。ミーティングの招集やアジェンダの事前連絡等、社内の推進を行っているのはマーケティング担当です。

今後の課題

今後の課題を教えてください。

課題は3つあります。まず1つ目は、アーリーアダプターやインフルエンサーを意識した施策の強化です。日本法人を設立して1年~1年半は、海外の情報などの感度に高くマーケティングオートメーション市場やMarketoについてある程度、知っている層に対する施策にフォーカスしてきました。しかし、想定していた以上に日本市場での浸透が早く、今後はさらにアーリーアダプター層の獲得が重要になっていきます。そのために現在、Webサイトの拡充を進めています。これまでのWebサイトおよびコンテンツは、「関心の領域や度合いを見る」という使い方が中心でした。これからは初期ステージの「お客様を温める」「気づきを与える」ことを、コンテンツとインサイドセールスとの組み合わせで実行したいと考えています。業種別、役職別などのコンテンツを準備して、自分が抱えている課題が解決できそうだから問い合わせてみよう、といった動きにつなげていきたいです。

2つ目は、自社セミナーの展開です。Marketoを検討中でもっと知りたいと思っている評価段階の層に対し、今後自社セミナーを積極的に実施していきたいと考えています。たくさんのMAベンダーがある中でWebだけではMarketo活用のメリットをなかなか伝わりにくいため、セミナーでカバーする必要があると見ています。

さらに、3つ目は、経営層への理解促進です。マーケティング担当者の理解は得ても経営層の理解が得られず、なかなか商談が進まないということが多いので、経営層への働きかけも重視しています。

マーケティングとコンテンツの増強にてよりナーチャリングを強化し、少しでも多くのMarketo活用事例をお届けできるよう取り組んでいきます。

プロフィール

小関 貴志 氏
株式会社マルケト バイスプレジデント

インタビュー後記

パワー・インタラクティブでは、現在Marketoを導入しマーケティング活動を行っています。
今回の取材で改めてインサイドセールスやスコアリングの重要性を再認識しました。
弊社としてのノウハウも積み上げていかなければです。
また、10月にはマーケティングオートメーションの活用をテーマとしたセミナーを、東京、大阪にて開催しました。大阪のセミナーにつきましてはセミナーレポートを公開中ですのでこちらも併せてご覧ください。

マルケト×パワー・インタラクティブ、双方の代表が語るマーケティングオートメーションの可能性【セミナーレポート】

インタビュー実施日:2015年9月1日
(パワー・インタラクティブ 広富)

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