インタビュー

「カスタマーサクセス戦略ブック」によるアカウント営業の発想転換

コンサルティング会社であるパワー・インタラクティブには、専任の営業やカスタマーサクセスは在籍していません。新規顧客/既存顧客問わずマーケティングコンサルタントが提案し、その後のプロジェクトも進めていきます。

2023年6月から7月にかけて、株式会社才流 コンサルタントの高橋 歩 氏をお招きし、3回にわたって研修を実施しました。テーマは「アカウント営業の体制強化」。今年度に入ってから課題として浮き彫りになってきた営業課題を解消するべく、コンサルタントが集まって研修を受講しました。

2023年9月7日、研修の実施を決めた遠藤、コンサルティングチームを束ねる久道、研修に参加したコンサルタントの鍋山に話を聞きました。

写真1:盛り上がりを見せたインタビューの様子

インタビュイー
取締役/常務執行役員 遠藤美加
マーケティングPro. グループ マネージャー 久道 真之介
マーケティングPro. グループ マーケティングコンサルタント 鍋山 百香

インタビュアー
マーケティング推進室 コンテンツ編集長 岩野 航平

パワー・インタラクティブの遠藤、広富が研修後に取材を受けて制作された記事が才流様のホームページに掲載されています。
顧客のゴールを深く理解するために。才流のカスタマーサクセス研修で意識と行動に変化

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コロナ禍によりお客様の解像度の低下に危機感を感じていた

研修を実施する前に感じていた課題を教えてください。

遠藤:パワー・インタラクティブには専任の営業担当はいません。コロナ以前の顧客開拓は、Webサイトと対面セミナーが中心でした。お客様の役に立つ情報をWebサイトに掲載し、関心を持っていただいたお客様をオフラインセミナーに誘導。セミナー会場での名刺交換が営業活動のスタートでした。

しかし、コロナ禍に入ってセミナーをオンラインにシフトしたことで、集客と運営は楽になった反面お客様と直接お話しする場を失い、お客様の解像度が下がっているという危機感を持っていました。

顧客層の変化に合わせ、営業体制をアカウント営業制にシフトした

遠藤:私たちの顧客層はこの5〜6年の間に大きく変化しました。Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)の支援をきっかけに、主要顧客がエンタープライズに大きくシフトし、お客様との関係も単発から継続的になりました。パワー・インタラクティブの得意領域もリード獲得やサイト改善など「短期の問題解決」から、「より継続的な組織づくりやデータマネジメント支援」に変わってきました。

継続的な支援を強化していくために2年ほど前からアカウント営業制を敷き、アカウント企業を担当しているコンサルタントにアカウント営業の役割を担ってもらうようにしました。

アカウント営業担当には、3つの目標を置きました。

1.継続契約をいただく
2.別サービスの契約をいただくための提案を増やす
3.他部門や事業、グループ会社などに接点を拡大する

各コンサルタントは会社の方針に理解は示すものの、営業経験がない者も多いうえ、定常業務にあたるコンサルティングの負荷も大きく、アカウント営業をどう進めてよいのか模索する状況が続いていました。

コロナ渦でコンサルティング活動自体もオンライン中心になっています。接点がある部門の上長や、関連部門のキーマンとオンライン会議では意見を交わしても、オフラインではほとんど接点をとれていません。

アカウント営業の前に、日々のコンサルティングを通じて信頼を勝ち取り、上層部やほかの部署の方とお会いできる機会をいただき、仕事の幅を広げる。そういったサイクルを作り出す必要がありました。

アカウントを動的に捉える「カスタマーサクセス戦略ブック」をつくりたい

研修を依頼するに至った経緯を教えてください。

遠藤:重点アカウントについては、担当コンサルタントが「顧客カルテ」を作成していました。顧客カルテには、経営方針や中長期のロードマップ、直近数年間の業績、従業員数、決算月などの情報を書き込んでいました。
これらはお客様を把握するうえで重要な情報ですが、どのようにお客様へ新たな課題を提示し、アプローチするかといった行動までつなげられていない。そういったなか、Webサイトの記事を通じて、高橋さんの「カスタマーサクセス戦略ブック」の考えに出会いました。

顧客にとって発注はステップの1つである。発注後の「お客様の成功」に至るプロセスの解像度を高める必要がある。受注までのカスタマージャーニーは意識していましたが、受注後の「お客様の成功」に向けたジャーニーは描けていなかったということに気づきました。

写真2:お客様の成功について語る高橋氏

私たちは「顧客カルテ」ではなく、「カスタマーサクセス戦略ブック」をつくる必要があったのです。コンサルタントが担うアカウント営業は「カスタマーサクセス活動」なんだと思い至り、研修を依頼しました。

ゴールへ向かうプロセスについて合意を取ることの重要性を学んだ

コンサルタントとして研修に参加して学んだことを教えてください。

鍋山:研修を受ける前からお客様と「ゴール」をすり合わせることはしていましたが、そこに至るまでのプロセスはどこか霧がかかったような感覚がありました。しかし研修を受けて、プロセスについてお客様と合意を取ることこそが重要なのだということを学びました。

写真3:研修の様子

多くの場合、ゴールに向かうプロセスは修正しながら進めていくことになります。プロセスに対して合意を取るようにすると、お客様の方針の変化にも気付けますし、プロセスに対するイメージのズレを最小限に収めることもできます。

研修を通じてプロセスの合意を取ることの重要性を学び、「プロセスを明確にし、合意を形成するにはどのようなコミュニケーションを取るべきなのか」と考えるようになりました。そこが最も大きな変化だと感じています。

組織と個人で少しずつ違うゴールを把握し、プロセスを設計する

鍋山:組織として目指す「ゴール」に向かって個人は動きますが、組織としてのゴールと個人としてのゴールは必ずしも一致するわけではありません。

例えば、組織として「事業全体の売上を伸ばす」というミッションがある場合。組織としてのミッションとは別に、担当者個人に対して「利益率が高いチャネルである自社サイトからの売上を伸ばす」といった別のミッションが与えられていることがあります。
この場合、自社サイトからの売上を伸ばすことを軸として事業全体の底上げを推進すると、担当者は高い評価を得られることになります。

このように、組織と個人で少しずつ違うゴールを正確に把握し、プロジェクトをスムーズに進められるようなプロセスを設計することが重要なのだと学びました。

コンサルティングチームとして、顧客解像度を高める必要がある

マーケティング Pro. グループのマネージャーという立場で研修を受けた感想を聞かせてください。

久道:今回の研修は、顧客解像度を高める必要性を再確認する機会になったと感じています。

パワー・インタラクティブはここ数年、マーケティングオートメーション(以下、MA)に焦点を絞って支援サービスをおこなってきました。支援実績は200件近くにのぼり、支援内容も標準化され、効率化してきました。一方、コロナ禍もあり、お客様のマーケティングのデジタル活用が加速し、マーケティング全体を俯瞰した戦略づくりやデータマネジメントが求められるようになりました。標準化された支援から私たちも脱却し、お客様ごとに課題と真摯に向き合い、精緻なプロセスをつくっていくことが求められます。

精緻なプロセスをつくるには、お客様のビジネスや組織体制など、様々な情報を収集して顧客解像度を高める必要があります。そうして作り上げたプロセスについて合意を取ることで、中長期的にお客様のマーケティングを支援することができます。

今後、マーケティングオペレーションをテーマにマーケティング組織を支援するにあたり、顧客解像度を高める必要性を再確認できたのは良いことだと考えています。

写真4:グループワークの結果を共有する久道

目の前の課題解決から、中長期的な課題の相談に乗る

久道:3月決算のお客様の場合、9月が半期末となります。これまでのマーケティング活動を振り返り、デジタルマーケティング推進のプロセスを見直す時期である今は、お客様と話し合う絶好のタイミングです。

今回の研修を受けたメンバーのなかからも、もっと俯瞰してお客様のことを知ろうと積極的にアプローチするメンバーも出てきました。これまでは、この時期には「来期」の提案をしていたところ、より長期の視点でお客様の相談にのる姿勢で対応してくれています。

現状はわずかな変化ですが、ここを足掛かりにマーケティング Pro. グループとしてコンサルティングの質を高めていければと思っています。

本来やるべきだがやれていないことを再認識できた

久道:マーケティングPro. グループとしてコンサルティングの質を高めるには、メンバー個々の意識改革に加えて、共通のしくみづくりが必要だと感じています。今回の研修で教わったことは、何もはじめて耳にしたような話ではありません。やらなければならないとわかってはいたものの、徹底できていなかったことばかりでした。

私たちが支援しているお客様のマーケティングレベルも年々上がっています。そういったレベルの高いお客様を支援するには、コンサルタント自身のレベルも上げていく必要があります。

今後はマーケティング活動のなかで得たデータだけでなく、全社で保有しているデータをどのように管理し、活用するのかといった視点も求められます。そういった「マーケティングだけに閉じない学習」にコンサルタント自身が取り組んでいかなければならないと感じています。

研修講師を務めた株式会社才流 高橋氏のコメント

株式会社才流
BtoBマーケティングコンサルタント
高橋 歩 氏

ソフトバンク・テクノロジーでWebマーケティング事業の立ち上げ後、楽天にて分析データに基づいた意思決定やWebサイト改善を先導。その後スタートアップでカスタマーサクセス・マーケティング・営業の各領域を担う。才流では、カスタマーサクセスの理念と経験を背景に、BtoBマーケティングコンサルタントとして活動中。

今回の3回にわたる研修では、顧客の課題や目標を理解し、具体的な行動計画を策定するために、顧客のゴールやプロセスを明らかにしていきました。

講義だけでなく、個別のワーク、ディスカッション、そしてプレゼンテーションを交えて知識を定着させるだけでなく、自身の担当顧客を題材にワークを進めることで、課題やアクションをはっきりと把握できたことが収穫でした。

研修で議論したように、顧客の状況は常に変化しています。パワー・インタラクティブのみなさんが提供できる価値も同様に進化しているはずです。これらの変化を把握しつつ、顧客とともにゴールに向かって歩むためのご支援ができたことをうれしく思っています。

今回の取り組みの成果について、またお話を聞かせていただけることを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします!

インタビュー後記

「ゴールだけでなく、プロセスについても合意を取る」という視点は、コンサルティングだけではなくすべてのプロジェクトを進めるうえで重要だと感じました。複数人でチームを組んでプロジェクトを進めるとき、プロセスの合意が取れていないと一枚岩になって動けないでしょう。私自身、そういった経験は何度もしています。

現状の問題点が見えたということは、解決に向けたアクションがとれるということでもあります。マーケティング推進室でも、「プロセスの合意」を意識して業務に取り組んでいきます。

岩野 航平

コンテンツ編集長

岩野 航平

コンテンツ戦略策定

新卒で株式会社ネオキャリアに入社し、新規オウンドメディアの立ち上げに従事。ネオキャリアを退職し、数カ月間飲食店で働いた後、パワー・インタラクティブに入社。マーケティング、インサイドセールスを担当したのち、コンテンツ編集長に就任。パワー・インタラクティブで発信するコンテンツ全般の企画やコンテンツ計画策定などをおこなう。

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